新しい犬との生活①

「今度こそ悔いのないようにちゃんと世話をする」と決心し、私は新しい犬を飼うことにしました。

両目の上に、まるで眉毛のように黒い毛があるその犬を、私は「マロ」と名付けました。

マロを迎えた翌日から、私は毎朝5時前に起き、マロの世話をしてから会社に行くようになりました。

ドックフードやおやつは厳選し、人間が口にするものは一切与えませんでした。

帰りも寄り道せずにまっすぐ帰り、マロの相手をしました。

 

マロはとても活発な犬で、おもちゃはすぐダメになりました。

昼寝用のベッドも、噛み散らかして3日と持ちません。

・・・なんでこんなに騒がしいんだろう・・・。空はもっと大人しかったのに・・・。

 

一瞬たりともじっとしていないため、全然目が離せません。

ふと気が付くとゴミ箱を漁っていたり、粗相をしていたり。

何度叱っても全く言うことをききません。

・・・なんでこんなに言うことをきかないんだろう・・・。空はもっとお利巧だったのに・・・。

 

私は空とマロをいちいち比較し、その度に落ち込んでいきました。

なまじ同じ犬種なだけに、どうしても空とマロを切り離して見ることができません。

空とマロの違いを目にするたびに、後悔の念が襲います。

全然可愛いなんて思えない。なんで犬なんて飼っちゃったんだろう。

 

会社から家に帰れば、マロの世話が待っています。

なんだか、家に帰るのがどんどん億劫になってきました。

もちろん、マロが体調を崩せばすぐ動物病院に連れていきましたし、毎日の世話も欠かさずしていました。

ただ、それはマロが愛おしいからではなく、生き物の命を預かった飼い主としての義務感からでした。

 

 

マロのためにも私のためにもこのままではまずい、と感じた私は、とりあえずマロと一緒に帰省することにしました。お盆で会社も休みだったため、ちょうどタイミングが良かったのです。

実家に帰ると、犬を飼うことに大反対だった両親は、手のひらを返してマロを歓迎しました。

たくさんの人に囲まれてマロも大喜びで、いつも以上にやんちゃぶりを発揮していました。

靴をかじり、畳を擦り切れるほど舐め、ゴミ箱をひっくり返し、もうため息しか出ないほどの暴れっぷりです。

 

「なんでこんなに言うこときかないのかなぁ。空はもっとお利巧だったのに」

マロが大暴れした後を片付けながら、つい母にこぼしたところ、

「言うこときかないのは当たり前じゃない、まだ子犬だもの」

「だって、空はもっとお利巧だったし」

「空とマロは違うじゃない、何言ってるの」

「それはそうだけど・・・」

「可愛いわぁ。本当、可愛いわぁ」

「可愛い?マロが?こんなに言うことをきかないのに?」

「何言ってるの。可愛いわよ、マロは」

 

そうか、可愛いのか。マロは可愛いんだ。

以来、空と比べそうになったときやマロが何か悪さをしたときは、「マロは可愛い、マロは可愛い」と繰り返して口に出すことにしました。

すると、不思議なことにだんだん可愛く思えるようになってきました。

 

続きは次回。

 

ではまた。