グリーフケアとは ④

今まで忘れていた「無力感」を思い出した私は、すっかり落ち着かなくなりました。

私にはまだ、両親やマロなど失いたくないものがあります。ですが、おそらく彼らは私よりも先に逝くことになるでしょう。ということは、生き続けている限りまた同じような喪失体験をし、そして無力感や恐怖感に苛まれるということです。

 

またこんな身の切られるような思いをしなければならないなんて、しかもそれが確定した未来なんて、私はいったいどうすればいいんだろう。

 

思わず、講師の方に聞きました。

「ということは、また同じような思いを味合わないといけないということですよね、生きている限り。私はいったいどうすればいいんでしょうか」

本当に、どうすればいいのか分からなかったんです。

 

講師の方は少し考えて、

「実際に私がしたことをお話ししますと、私の父と母は老人ホームに入っていたのですが、面会して別れる際にハグをするようにしました」

「ハグ、ですか」

「ええ。父は恥ずかしがったので、握手にしました。このハグもしくは握手は、必ず別れる際にする、と決めました」

「・・・何か変わりましたか」

「そうですね、何が変わった、とはっきりしたことは言えませんが、父母亡き今、その取り決めを守れて良かった、と思っています。結局、“今できることをする”しかないのではないか、と思います」

 

 

今できることをする。

その言葉を聴いて、やっぱり避けることはできないんだな、と思いました。

同時に、逆に、今できることをするしかないんだな、と思いました。

どんなに手を尽くしたとしても、どっちみち悲しんだり後悔したりはするんでしょうし。

 

そこで考えました。

失って困るもの、例えば両親に対して、今何かできることはないだろうか。

とりあえず、面倒くさがらず実家にはもう少しマメに帰ろう。うん、そうしよう。

マロには?何かできることはないだろうか。

とりあえず、できるだけ一緒にいよう。仕事以外は、ずっと一緒にいよう。うん、そうしよう。

方向性が決まって、ほんの少し私はホッとしました。

 

続きは次回。

 

ではまた。