グリーフケアとは ⑧

更新が空いてしまい、大変失礼しました。

グリーフ理論の続きを書きたいと思います。

 

グリーフケアとは ⑦でランドーの6Rについて触れました。

今回はウォーデンのグリーフ理論(ウォーデンの4つのタスク)について説明します。

 

ウォーデンのグリーフ理論とは、“グリーフの回復のためには、その過程でやらなければならない4つのタスク(=本人が解決すべき課題)がある”というものです。

ちなみにここでいう「グリーフの回復」とは、「グリーフ前と同じような心の状態に戻る」いわゆる“完全治癒”ではなく、「社会生活で支障がない状態であること(寛解)」を指します。

 

 

タスク1.喪失の現実を容認する

タスク1はグリーフ過程の始まりです。

大事な存在を失うと、しばらくは故人を探しますが、日常生活の中で不在を認識させられます。そして、時間と共に故人の生還を諦め、その死を容認するようになります。

程度の差はありますが、誰もが喪失の現実を否定する傾向があります。よって、死の容認には数カ月(もしくはそれ以上)かかります。突然死の場合は、より容認が難しくなります。

なお、葬儀や命日の記念行事などは容認を助けてくれます

 

タスク2.グリーフの苦痛を経験する(味わう)

タスク2はグリーフ過程を大きく前進させます。

死の容認後、体と心で痛みを感じるようになります。痛みはあって当然のもので、この痛みを回避したり抑え込んだりすると、グリーフが複雑化したり、心身の病の原因になることがあります。

ただ残念ながら、社会一般はグリーフの感情表現を否定しがちです。「あなたが悲しんでばかりいると〇〇も悲しむよ」「そろそろ気持ちを切り替えたら?」など、言われたことがある人も多いでしょう。その人からすれば良かれと思っての言葉なのですが、こういった言葉はグリーフの過程を遅らせる原因の一つになります。

 

タスク3.故人不在の環境に適応する

タスク3を前向きに実行することで、新たな将来を開くきっかけになります。

故人の死に伴う「第二義的喪失※」に気づくには、時間を要します。そして、この第二義的喪失に対応すること(=故人の役割を肩代わりすること)が、適応の第一歩になります。

タスク3では“人生観、世界観の変化による生き方(アイデンティティ)の再編”が最も重要になってきます。

 

タスク4.気持ち的に個人を位置づけ直し、日常生活を続けていく

タスク4は前向きに生きるために不可欠なタスクです。

決して個人を忘れるということではなく、故人のこともその思いも、ずっと持ち続けていくことです。

「心の中に故人は生きている」「故人との愛の絆は永遠である」「よりよく生きることは故人への供養になる」など、位置づけは人それぞれです。お墓参りをしたり、故人の誕生日をお祝いしたりなどはタスク4の実行の助けになります。

 

次回は「喪失からの回復・適応・対応」について説明します。

 

ではまた。

 

※第二義的喪失とは・・・「自分にとっての故人」という、第一義的喪失に付随した喪失のこと。(例.夫が亡くなったことで経済的に困窮し、生活レベルを落とさざるを得なかった 等)